プロ下山家、死す

Yahooニュースの号外で栗城史多氏がエベレスト登頂を断念(何度目だよ)して下山中に亡くなった事を知る。

私個人としてはこの人がやってきたことには疑問しかないし、正直言って脳筋バカ企業や個人スポンサーの玩具にされてる感が強かったのもあって、嫌いな部類だった。

死者に鞭打つ訳ではないけど、とにかく考えが甘いとしか言えない。

酸素ボンベも持たずに標高8000メートルの山に行ったら、まず息が出来ないし体は凍るように寒いし(実際この人は凍傷で指を失っている)、つまりは死の世界なのである。

死の世界をのぞく、つまり世界最高峰という神聖な領域に相応しい格好で臨む事を怠って、本当に死の世界に行ってしまった。

高い山に登るには、それなりの装備や服装が必要なのだ。

それがないと、いやあったとしても山においては死の世界は薄氷を隔てたところにあるのである。

これまで無酸素と軽装備で何度も挑戦して、むしろよく生きて帰ってこられたなと不思議だったくらいだから。(さっきTwitter見てたら指先が出た手袋でスマホいじってる写真が流れてきて、あーこれは…って思った)

 

そもそも私は山登りが嫌いである。

肥満体だしぐうたらだし山に生息する生き物も苦手だし、高い所で偏頭痛になるし、何より高いところが大の苦手ときている。

何を好き好んで重い荷物を背負って険しい道を登り、登り終えたらまた下りる…。

あー嫌だ。

ただ、実家も父方の祖父母も山に近い所なので、昔から山にはそれなりに馴染みはある。

だからこそ山の恐さも有り難さも知っている。

 

この国では今日まで畏敬の対象になっている。

登山歴が長くても短くても、「私は何度も登っている」とか「今回は大丈夫だろう」という過信は、絶対にしてはいけない。

学生時代に学校帰りに高尾山まで行って、サクサク登って木の根道で引き返したり(その時は7センチヒールのサンダルだった)、ローヒール靴で鞍馬山を越えて貴船神社まで行った事もあるけど、若さゆえの過ちなのでもう今はしない。

ほんと、すみませんでした。

 

今回の栗城氏の件は、起こるべくして起こったので同情の余地はない。

ただ、彼を「勇気ある玩具」として扱ってきたマスコミやスポンサー、周囲の人間はどうするのだろう。

また無謀な事をしたがる若者を見つけては玩具にするのだろうか。

きっとまた同じ事を繰り返すんだろうなと思ってはいるけれど、世間はもうその頃にはこの栗城氏の事も忘れているのだろうな…。

きっと私も。

 

さて、明日の支度をしよう。